ハルギタ(Harghita)県とコヴァスナ(Covasna)県にまたがるハルギタ山脈の頂に、スフンタ・アナ湖(Lacul Sfânt Ana)というルーマニア唯一の火山湖とティノヴル・モホシュ(Tinovul Mohoș)という湿地帯があります。ハルギタ山脈の森林の中を比較的ゆるい坂を、何度も両県を行ったり来たりしながら登っていくと、ハルギタ県側にある湖と湿地帯にたどり着きます。
「Tinovul Mohoș」の語源はハンガリー語の「コケに覆われた沼」という意味で、火山の噴火口に形成された湿地帯です。カルパチア山脈と東欧で最も新しい噴火口といっても4万2千年以上前と言われていますが、まず、ティノヴル・モホシュのある場所で噴火が起きクレーターができた後、水が溜まり沼になりました。次に現在のスフンタ・アナ湖の場所から噴火したとき、ティノヴル・モホシュに灰が溜まり、現在では苔や泥炭で覆われています。
ティノヴル・モホシュは遊歩道が設置されていて、珍しい動植物がたくさん見られます。遊歩道を散策するには、入り口で待機している専門のガイドさんと一緒に入る必要があります。「ほらごらん、あそこはこの間熊がかじったところだよ」「この辺りは害虫の被害があってねぇ・・・」「これは食虫植物だよ」「ここでみんなでジャンプしてみよう!」なんていろいろ楽しくお話してくれます。
1241年にモンゴルが侵略したとき、ルーマニアはあちこち破壊され大打撃をうけました。イグリシュ修道院も破壊され、その後再建したのですが、1357年時点で6人の僧侶しかおらず、1500年には修道院は閉鎖され、現在は廃墟となっています。
Lacul Sfânta AnaはTinovul Mohoșから100mほど標高の低い場所にあります。以前は湖の入り口近くまで車が入れましたが、現在はTinovul Mohoșの小屋から1時間に1本出る専用のバスで降ります。
目の前に現れる湖は森に囲まれてこじんまりとしていますが、とてもさわやかな風が吹きます。湖畔には1572年にはすでに存在したとされる小さな教会(現在の建物は1927年に再建されたもの)があります。
夕方5時になると決まって熊が喉を潤しにおりてくるそうで、私もこの日、母熊が湖の水を飲んだり木の実を食べたり、子熊が戯れる姿を見ることができました ♪